安全性分析における5つの指標とは?財務健全性を見極める上でのポイントなどを解説します

財務の基礎知識

企業への投資や融資を検討するうえで、財務健全性を見極めることは非常に重要です。今回は安全性分析における5つの指標について詳しくお伝えするとともに、分析のポイントなどについても解説します。

財務の健全性とは

会社の財務状況がどのような状況であるかを示したものです。

自己資本比率が高いほど財務健全性が高いと判断され、会社が将来にわたって長続きしやすい状況にあるとみなされます。

投資を検討している場合には、財務の健全性の高さが判断基準となるでしょう。

したがって、企業は投資家や各種金融機関に対して財務健全性の高さをアピールすることで優良企業としてみなされ、投資や融資が受けやすくなるというメリットがあります。

もちろん、投資や融資側にとっても、倒産等のリスクが低く、また株主のお金を増やしてくれるというメリットがあります。

安全性分析はなぜ必要か

そもそも安全性分析とは、企業経営の安定性をはかるための財務分析の手法の一つです。

分析では、財務諸表や貸借対照表を利用し、財務の健全性が維持できているか、また将来にわたって継続的に経営ができる状態であるかどうかを判断します。

たとえば、売上が非常に多い企業であったとしてもそれ以上に負債等による支出があった場合には、経営が安定しているとは言えないでしょう。たとえ帳簿上が黒字であったとしても、支払いが多い場合には資金繰りがつかなかったり、借り入れを増やさなければならないなど黒字倒産を招くリスクがあります。

したがって、安全性分析ではいくつかの指標を総合的に分析することが重要になります。安全性分析において主に用いられる指標は5種類あります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

安全性分析の指標①株主資本比率

株主資本比率=株主資本÷総資産(負債+株主資本)×100(%)

株式資本比率は、総資産に対する株主が保有する資産の割合のことです。

株主資本は、返済の必要がないことから安全性が高いという評価になる一方で、高すぎると資金を効果的に活用できていないという意味にもなります。

株主資本比率は業種等によってその目安が異なりますが、30~50%程度の企業が多く、銀行業では10%程度となっています。

安全性分析の指標②流動分析

流動比率=流動資産÷流動負債×100(%)

流動資産とは、資産のうち1年以内に現金化することのできるものであり、具体的には現預金や売り掛け金、受取手形などのことです。

流動負債とは、1年以内に返済が可能な負債であり、買掛金や短期借入金が該当します。

流動比率は、流動負債に対する流動資産の割合を示しており、短期的な資金繰りの安全性を把握することができます。

流動比率の場合、100%を超えることで資産が負債を上回る状態であることから、100%が安全性のボーダーラインであるといえます。

100%を下回る企業であれば、支払いができない状況に陥るリスクがあると言えるでしょう。

安全性分析の指標③当座比率

当座比率=当座資産÷流動負債×100(%)

先にご紹介した流動比率よりもさらに短期間で現金化できる資産を当座資産、返済ができる負債を当座負債と呼びます。

当座資産には、現預金、受取手形、売掛金が該当し、当座負債には支払手形、買掛金、短期借入金など基本的には流動資産、負債と同様ものが該当しますが、大きな違いとしては当座比率を計算する場合には、流動比率を計算する際に含んでいた棚卸資産が含まれないという点です。

棚卸資産とは、企業が販売目的で一時的に保有している商品や製品、原材料などのいわゆる在庫の総称です。

棚卸資産は現金化する際に売掛が必要となることから、流動資産の中でも現金化に時間がかかるものであるために、より実態的な資金繰りを把握する当座比率の計算からは除外されます。

安全性分析の指標④固定比率

固定比率=固定資産÷自己資本×100(%)

固定資産とは、現金化するのに1年以上を要するものや長期間にわたって使用することを前提とする資産のことです。

具体的には、土地や建物、機械設備のような有形資産のほか、ソフトウェアや特許のような無形資産も含まれます。

固定比率では、固定資産をどの程度自己資本で賄っているかを見ることができ、100%を下回る状態であれば、借入金に頼らずに固定資産を保有できている状態であり、安全性が高い企業であると判断することができます。

ただし、固定比率に関しては業種により差が大きくなっています。

不動産業や宿泊業、飲食サービス業では固定比率の平均値が100%を大きく超えていますが、事業の性質上多くの固定資産を保有する必要があることから、数値を見る際には必ず業種や業態を踏まえた上での判断が必要だといえます。

固定長期適合率とは

固定比率と似た言葉に、固定長期適合率があります。

固定長期適合率(%) = 固定資産 ÷(自己資本 + 固定負債)× 100

式を見てわかる通り、固定長期適合率の場合には、自己資本に固定負債を含めて計算するものであり、固定負債には社債や長期借入金などの返済期限が1年以上ある負債が該当します。

固定比率では、業種によって100%を大きく上回る場合があるものの、固定長期適合率に関してはどの業界においても平均値では100%を切っています。

したがって、固定比率を分析する際には、必要に応じて固定長期適合率を用いることで、判断材料を増やせます。

安全性分析の指標⑤インスタントカバレッジレシオ

インタレストカバレッジレシオ=(営業利益+金融収益)÷(金融費用)(倍)

企業が安定した事業から獲得できている利益が、支払う必要のある利息をどれくらい賄うことができているかを判断するものです。

倍率は、最低でも1倍を超えている必要があります。

というのも、1倍を下回る状態は、利息の支払いを自己資本を切り崩して行っている状況を示すものであるからです。

なお、インスタント・カバレッジ・レシオは、設立年数や事業戦略等によって数字が上下するものであるため、企業の実態を把握したうえでの数値の判断や分析が必要となります。

安全性分析は1つの指標で判断できない

ここまで安全分析に用いられる5つの指標について詳しくご説明していましたが、大切なのは各指標をあわせて比較検討し、総合的に判断するということです。

ただ単に数値を見て、高いからよい、低いから悪いという判断をするのではなく、業種や業態、また企業の状況や各種情報などを加味したうえで、数値があらわす意味を正しく分析していくことが求められます。

したがって、同業他社との比較をおこなったり過去の数値との比較をすることで、より数値が示す意味を正しく理解することができるといえます。

また、安全性分析では長期でおこなうか短期でおこなうかによって利用する指標が異なります。

はじめに、何を分析するのかを確認したうえで活用する分析指標を選択していきましょう。

まとめ

以上、今回の記事では企業の財務健全性の指標となる5つの項目について解説してきました。

5つの項目以外にも、安全性分析をおこなうにあたって参考となる項目はいくつかあり、分析の内容に応じて必要なものをピックアップし比較検討していくことが重要になります。

分析方法としては、一つの指標を注視するのではなく、いくつかの指標を比べるということ、また同業種の他社との比較や過去の資料を参考にして推移を見比べるなど、一つの数値ではなく複数を比較することが正しい分析結果を見出すうえで必要とされます。

今回お伝えした指標をもとにしておこなわれた安全性分析によって、企業の経営が将来にわたって安定の見込みがあるか、投資家たちにとって投資する価値があるか否かの判断材料とすることができるでしょう。

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