財務リスクを理解し対処することは、企業が将来にわたって経営を維持していくことに繋がります。今回は財務リスクの種類や分析方法、リスク軽減のためにできることなどについてお伝えします。
財務リスクとは
企業が抱える様々なリスクのうち、財務リスクとは企業の運転資金の調達を負債によって行う場合や投資による損失などにより発生するリスクのことです。
投資によって成果が上げられれば利益に繋がりますが、逆に失敗してしまった場合には多くの損失を被ることになります。
したがって、資金調達を負債によって行う場合や投資を行う際には、発生しうる財務リスクを想定し、対策をうったうえで進めていくことが重要となります。
財務に関するリスクの種類
続いては、具体的に財務リスクにはどのような種類があるのか、一例を挙げて見ていきましょう。
1,為替リスク
為替レートの変動によるリスクのことです。
外国に不動産を持っていた場合には、その国の通貨が暴落してしまった場合には不動産価値が大きく下がってしまうことや、商品の輸入を行っている場合であれば為替の変化により利益にも大きく影響が出る可能性があります。
したがって外資系企業や海外との取引のある企業は為替リスクを出来るだけ抑えるために、海外情勢を常に把握しておく必要があるといえます。
2,金利リスク
金利の変動により、保有資産の価値が変動するほか、債券価格や返済の金額が変わるリスクです。
金利リスクは、金利の変更、外交変動、自然災害などさまざまな事柄が原因となり発生する可能性があるものです。
3,株価リスク
株式や投資信託、債券などの価格が変動することで、企業の資産価値が変わってしまうリスクのことです。
これらは、企業の財務や決算状況のほか、企業に関連するニュースなどによっても大きく影響を受ける場合があります。
4,クレジットリスク
取引先の財務状況の悪化により、元本の返済や金利の支払いが滞ったり、停止されたりするなどして債権が回収できないリスクのことです。
信用リスクとも呼ばれます。具体的には、株式投資、預貯金、債券投資、融資などの債権に対して取引先の倒産や債務不履行などが原因として挙げられます。
財務リスクの指標
続いては、財務リスクを調べる際に用いる指標についてご説明していきます。
1,負債比率
負債比率 =( 負債 ÷ 自己資本) × 100
負債比率とは、自己資本に対する負債の割合を示したものです。これにより、企業がどれくらい負債に頼っているのかを把握することができます。
負債比率が高いと、多くの借金に頼って経営をしていることを示しており、財務リスクが高いという判断になります。
なお、負債比率の理想目安に関しては、業種や経営状況(新規で設備投資をしたばかりといった状況や新商品開発のために負債が増えている段階など)によって変わってきます。
したがって、一概に数値だけで判断するのではなく、分析する企業の状況を踏まえる必要があります。
2,株式資本比率
株主資本比率 = (株主資本 ÷ 総資本) × 100
株式資本比率とは、総資産における株主資本の割合を示したものです。
株主資本とは、企業が発行した株式から得た資金および過去の純利益の備蓄額を合わせたものであり、株主資本が多いほど借金に依存していない安定した経営状況であることがわかります。
負債比率と同様に、株式資本比率に関しても業種や市場環境、経営戦略等を考慮したうえで数値を判断する必要があるものです。
基本的には株式資本比率は高いほど財務リスクが低いとみなされるものであるため、仮に低い値になっている場合どういったことが原因であるのか、また今後成長の見込める段階であるのかなどを判断することが求められます。
財務リスクが高まると
財務リスクが高まることで、経営の安定性や安全性が損なわれ、企業としての評価が下がってしまう可能性があります。
企業評価の下落は、株価や債券評価の下落、新規取引が獲得できない、資金調達が難航するなど健全な企業運営においてさまざまな負担を引き起こす可能性があります。
したがって、早い段階で財務リスクを軽減させるための対策を講じることが企業の健全性を保つうえで重要になってくるのです。
財務リスクは低い方が良いのか
結論から申し上げますと、財務リスクは必ずしも低くしなければならない、というものではありません。
必要に応じて、財務リスクを高める負債の割合を高めることで、自己資本利益率を高める要因となる場合があります。
ここで期待しているのがレバレッジ効果です。レバレッジ効果とは、企業が運用資金を調達する際に、自己資本に加えて他人資本を利用することで投資効果を高めようとするものです。
これにより、大きなリターンが期待出来る一方で財務リスクが高くなることから、財務レバレッジを実施する際には慎重な判断が求められます。
財務におけるリスクアセスメントと最適化
続いては、財務リスクを分析・理解し、どのようにして対処していく必要があるかについてお話していきましょう。
1,資金調達ルートの確保
経営状況が安定している黒字の時点で、融資してくれる金融機関とのつながりを確保しておくことで、いざというときに資金調達を円滑に行うことができるようになります。
赤字になってから動き出すのでは、融資先を見つけるのが難しかったり、赤字が積み重なっていくと必要な経費の支払いが滞ってしまうなどのリスクがあります。
2,予算管理による予測
必要な経費等をあらかじめ予測しておくことで、事前に財務リスクを軽減させるための対策をとることができます。
対象となる予算には4種類あります。
①売上予算
当期中に達成できるであろうと予想した会社の売り上げ目標のことで、過去の商品・製品の売り上げ成績や市場動向などを考慮して算出されるものです。
売上予算を設定することは、同時に企業の経営戦略を考える指標となるほか、将来に向けた経営の方向性を見出すことにもつながります。
②原価予算
売上予算を達成するために必要な原価の合計のことです。
販売業であれば商品仕入、製造業では原材料費の予算を示します。
経済状況や為替の影響により原価に変動が生じるため、市場情勢を考慮しながらの算出が必要とされます。
③経費予算
売上とは直接関わらない、企業が事業を継続する上で必要な経費の見積もりのことです。
具体的には事務所の家賃や光熱費、通信費、消耗品費、交通費、また従業員を雇っている場合には給与などがそれにあたります。
経費の見積もりを算出しておくことで、無駄なコストを意識することができ、最終的には売り上げを伸ばすことに繋がります。
④利益予算
企業の目標達成の目安を算出した予算のことです。
利益予算は、売上から原価と経費を差し引いて算出します。
利益は売り上げを伸ばすことのほか、原価や経費を抑えることによっても増やすことができます。
企業が事業を継続させるうえでは、利益を生み出すことが重要になるのです。
まとめ
以上、財務リスクとはどのようなものか、また財務リスクの種類や分析方法等についてご紹介してきました。
財務リスクをあらかじめ理解し対処することは、そのリスクを軽減したり、自社の経営状況を安定させることに繋がります。
また、お伝えしたように財務リスクは必ずしも低い値でなければならないというものではなく、企業の経営戦略によってリスクを取る必要がある場合もあります。
したがって、単純にリスクが高い、低いということで計るのではなく会社の経営状況や戦略などの情報を収集し、考慮したうえでの判断が必要となると言えるでしょう。
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